【エッセイ】裏庭について – それからすこし家の話/mizu K
裏庭について – それからすこし家の話
北里、という地名がある。しばらく住んでいた時期があるが、そこの風景を思い出そ
うとすると、まず祖父の家の入口が面している道路から左手、道が急な下り坂になって
い、くだりきったあたりは十字路と畑と川、それから道はまたなだらかにのぼりはじめ、
こんもりと覆いかぶさる木々のトンネルの下を通っている景色である。別のところには
そでひき坂という名の急な坂もあるし、墓地や金比羅に行くにも急勾配の坂をのぼらな
ければならず、それではその町全体に坂が多く、いわゆる坂の町かというとそういうわ
けではない。おそらくそのあたりからぐるりとゆる
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