廃工場/龍二
散乱している風景を、工場街の白煙越しに掴む事を試みる。背中を焼いた真夏の陽炎と瓜二つの屈折した光を、諦めにも似た抱擁で迎え入れた。
ひどく人工的な幹線道路を基本線とした網の目の様な街の中を、眉間にしわを寄せたまま、うつむいて通り過ぎる。
あの場所に、弔いをする、生き物の血に塗れた少年を抱きしめる者は誰もいなかった。
腐蝕と虫食いで崩壊し、穴と蠢く白い虫だらけの肉の塊を抱きしめる少年に声をかける者は誰もいなかった。
たった一人で墓石を抱える少年は、彼を蔑む者達が、自分の持つ亡骸と同じ姿になったとしても、きっと同じ様に墓標を立てるだろう。
そして、またその姿を激しい感情と、とても深く、底の見えない穴の様な表情で、見送ってしまう気がしている。
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