海の記憶/小川 葉
海を見ると
懐かしさがこみあげてくるのは
きっと私たちが受け継いできた命が
すべてを知っているからなのだ
私たちの親が見た海
そのまた親が見た海
さらにおよそたどり着くまで
私たちの命の親が見てきた海が
このからだのどこかに
ひそやかに記憶されているのだ
それでも海しか知らない
時の思い出があるので
海はあかく染まりながら
とてもさみしい顔をする
そんなとき
どうするべきかも
私たちにはきちんと記憶されていて
隣で涙をこらえる愛する人の肩を
強く強く
だきしめるのだ
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