冬の日の夜/龍二
 
「冬の日」


冷たい土を素手で掘り進める。霜が降りた河川敷の土が、稀に指先に噛み付いた。擦り切れたジーンズの膝、素肌との温度差に徐々に感覚を失っていく。
50m間隔の街灯の光を頼りに、自分が立っている場所よりも低い位置を確かめるのは困難だった。
穴に手を入れ、手の先が底にある時に、肘が穴の淵にある程度の深さまで彫った所で、作業を止めた。
傍らの温度の低い毛皮を抱き上げて、静かに、ゆっくりと、川面の音さえ遮らないぐらいに、それを穴の底に置いた。
朧月が更に濡れる頃には、その穴は不自然な程周囲に溶け込み、何処に穴があったのかわからなくなった。
一握、土を拾い上げ、もう一度その土を地表
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