夜do仮の夢/智哉
ヤドカリは夢を見た
そんなに複雑な内容じゃなかった気がしないでもないが
たぶんこんな感じだ
この夜がクリームシチューのような色とトロみで
この殻がジャガイモのようにずしりと重くて
なぜか僕は具としてニンジンと戯れている
どこからか僕を呼ぶ声がする
僕の名前を呼んでいるのではないのだけれど
確実に僕のことを呼んでいることだけは解る
何処にいるのと僕は叫ぶ
君の声は全く応えてはくれないのだけれど
いたずらに風を吹かせて僕の耳を刺激している
耳は弱いのと艶っぽい言葉を吐いた君が頭に浮かび
もう一度君を抱き、快感に溶け込みたいと考えたが
夢のまた夢
いや、一度交わったことさえも
夢だったのかもしれないな
むしろ、これも夢か?
はい、ご愁傷様。
一夜の恋をし続ける、ある魚介類の夢にすぎないのです。
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