詩人たちに継ぐ/熊髭b
 
逃げ込む準備ができてはいないか。


自分と他者の間に成り立つ「世間」を引き受けている。私はそんな言葉の「世界」に安心を覚える。「世界」は逃避の単眼ではない。「世間」の複眼を生き、その複眼の中で自分の旗をどこに立てるか、その所在の在り処が「世界」を帯びる。


そして、その心もとない旗を持ち、また「世間」にまみれていく姿が、詩人の本分である。もし旗の色が変わってしまったならば、その変わったことを「世間」で引き受け、「世界」を鍛えればいい。旗が折れれば、「世間」に立ち戻り、「世界」を再構築すればいい。


言葉は、忘却のためにあるのではない。ましてや、自己同一性を確認するための道具でもない。問いの立て方の方向性の間違いに、詩人たちは目覚めなければいけない。大丈夫。言葉は、忘却にあがらうため、それはすなわち、他者の存在を全力で証明するためにこれだけの歴史を費やしてきたのだから。
戻る   Point(4)