「近付く」/菊尾
 
階段を上る足音は 
後からわたしを追い越して行った 
想像以上の現実感 
ある日、空に見た一つのひずみ 
わたしはそこへ近付こうと 
高みを探した 
見下ろせば 
オウトツの街、色彩豊かな広場 
馴染むことのできないわたしは 
どこに居たって薄い影を引きずって 
ねぇ 
何色を羽織っても何色にもなれないね 
甘さ控えめの妄想で暮らしたのは 
現実から遠ざからないようにした唯一の手段 
不器用すぎて適応の仕方を知らないだけ 
染まらず染められず誰も見えなくなっただけ 
それはいつもの日常だった 
何も変わらない毎日の一部だった 
それがいつの間に?
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