叫ぶ/Utakata
夜明け前
霜の張り付いた窓硝子に静脈の浮き出る青白い掌を当てる
僅かに持った体温の下で
薄い氷が悲鳴を上げながら融けていく
痛み
手のひらの型に付いた水滴
紅い血
電話を手に取る
誰かに繋がるはずの可能性
のみで出来た樹脂の塊を手にとる
薄暗がりの中で画面が白く光る
どことなく亡霊という言葉が頭に浮かぶ
例えばそれは、と言いよどむ先から
その比喩の向けられるべきだった物事は失われていって
最後には壁に掛かる狂った時計が
規則正しく世界を切り刻む音が聞こえるだけだ
壁の時計の時間を直すことはできる
しかし竜頭の螺子を捻った瞬間
僕は
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