受話器/小川 葉
 
受話器を逆さまにして
あの世と交信する

話すように聞き
聞くように話す
すると私は
あの世の人になる

受話器を置く
置き去りにされた
声とか相槌とか
もう思い出せない
という感覚だけ
残して

今はただ
理由もわからないまま
涙が流れている
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