リライト:Gandou/風季
 
令が口の中で、別な訴えになっていたそうで
噎せていた視線が甲虫のように静かになって

ふとランプに染まった爪から目を離したとき
慶びを滲ませた眸に捕まえられた

口づけたさと
逃げたさが踊っているバルコニーで
背を伸ばし、熟した月を嘗めた
眩しい躊躇いの玉が幾つも肩を滑っていった
吹き付ける甘さが
冗談でもいいと
ブランケットを受け取り、口許を隠す

白を黒と言えるほどあざやかに
くるわせてほしいよ

項垂れる彼等はいつの日も爽やかな酔いを不器用に弄ぶ

ラッピングを解かれたくて
抱いた痺れを、忘れてしまった
枯れた実を耳で数え、外国語の暗誦
海鳴りに怯えて、離陸する

厚い幕にあなたを遮られようとも意に介さない

華やかな宣告だった、ときみが微笑んでいる
バルコニーの上、照れ隠しにまた笑って

山肌を降りる好い風を届けたかった
潮騒を
なんて、満ちている
澄みきった黒いペンの色に
目を閉じる

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