見つめ合い/鴫澤初音
った。生きていくって、なんて馬鹿げて
いるんだろうか、そう思わずにいられなかった。数年ぶりに会った
同級が言った「死ぬなんて申し訳なさすぎるよ」。
バナナジュースはおいしかったけれど、だからどうというほどで
もなかった。よくある味。そんなふうに生きていくこと。何本目か
の煙草に火をつけて、吸い込んだ。喫茶店ではいつも居心地が悪か
った。それほど好きではなかったにもかかわらず出かけてしまうの
は単に家にいたくなかったから。CDプレーヤーから聴いていたの
は、森田貢の「東京」だった。
君に笑って、さよならって言った。そう、歌は告げていた。
戻る 編 削 Point(1)