スケッチ/みつべえ
・・・・・・父は営林署の職員だった。私たち家族は小高い丘の上に建てられた社宅のひとつに住んだ。数十軒の社宅が営林署の三階だての建物を円形状にとりかこみ、遠くから眺めると近世の城とその武家屋敷の集落のようだった。丘は段々になっており、最上段の営林署の建物から順次、所長の家、部長の家、課長の家という具合に、いわゆるエライ順に建てられていた。私たちの家は一番低い段にあり、そのすぐ前から丘全体を包囲する形で板塀がつづいていた。一番低い所といっても、じゅうぶん町を見下ろせる高さであり、家々の屋根や野や畑のつらなりの果てに、巨大な壁のようにオンネヌプリが聳えていた。玄関の横の小さな窓いっぱいに迫ってくるその山
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