祝詞、君の/鴫澤初音
 
なくても互いにもたれあって、
  微笑んでいた。もうわかりあうことを放棄して、わかりあうことが
  私たちを幸せにするわけでもないことを知っているから――だから
  色んなことが流れていく中で駄目なら駄目でいいかって
  私たちは既にわかっていた、わかっていたと、思う。
  
  「そういや、またあそこに行くの」
  「うんそのつもりだけど、どうする?他に行きたいとこある」

  同じ、同じところ、なんて、笑って結局私たちは同じ道を行く。
  振り返ると、流れた煙が眼に入ってすこし染みた。
  空が青かった。私は君の腕もとらずに少し離れた距離を
  並んで歩くことに決めた、あのときからずっと辿ってきた、
  道を。


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