雲が泣く/小川 葉
 
雲は
空のことが好きなのだ

ある晴れた日
どこからともなく
雲はやってきて
やがて空のすべてを覆いつくし
ひとりじめにした
そして泣いた

泣いて泣いて
涙がかれたら
雲はあとかたもなく
消えてしまった

なぜ泣いたのか
あの雲の向こうで
空とのあいだに
何があったのか

愛する人よ
いつか
僕は君のすべてを覆いつくし
そして泣くだろう
雲と同じ理由で
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