私は抵抗しようと思う/佐野みお
磁針の指すN極めざして
人混みの中を歩き続ける
身体はふしぶし痛み火照り
イルミネーションに囲まれ
深い咳が絶えない
この街のどこかに
今夜極北が存在するはずだ
そこに屹立したいのだ
サンタさん、「南の島」に
餓死しかけている子がいます
‐そこまではね
トナカイの足も回りかねるね‐
サンタクロースが面倒くさそうに
苦笑いした
だから北の頂点に立とうと思う
そこからこの寒気も吹き出しているのか
人々が向かう方向は私とは逆で
そちらが南だというのか
S極へ?
緯度ゼロ線を越えて?
越えられはしないだろう
だれもあの波に立ち向かい
乗り切ることはできないだろう
私は波から逃げるばかりだ
N極に向かって
EとWの振幅運動に眩まされ
動機を見失いそうになる
LとRにこだわらなければと
思い直す
Nの世界の祭り、今夜、だからだ
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