地平線/小川 葉
 
1.少女 
地平線の上で 
縄跳びをしている 
少女がある日 
その向こう側に 
行ってしまった 
縄は残されたまま 
速度をうしなわずに 
今もまわり続けている 
地平線の向こう側には 
言葉のいらない 
世界があるのだと言う 
そこには意味しかなく 
しかしその意味さえも本当は 
無意味なのだと言う 
僕らは意味を失ったとき 
つい言葉に頼りがちになる 
今もまわり続ける縄の 
意味を考えながら 
わかりかけては見失う 
そんな日々を 
これから長い間 
過ごさなければならない 
少女とは 
君が愛した人のことだ 
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)