少年/小川 葉
 
地平線の上で
ブランコに乗っている
少年がある日
そのこちら側に
来てしまった

ブランコは残されたまま
速度をうしなわずに
今も揺れ続けている

地平線のこちら側には
意味のいらない
世界があるのだと知る
そこには言葉しかなく
しかしその言葉さえも本当は
単なる音でしかないことを知る

僕らは言葉を失ったとき
つい意味を求めがちになる

今も揺れ続けるブランコの
音を聞きながら
言いかけては口ごもる
そんな日々を
これから長い間
過ごさなければならない

少年とは
誰かが愛した君のことだ
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