スカート/亜樹
 
ひらり、と
スカートがひるがえる
木枯らしだろうが
春一番だろうが
関係なく
吹く風にあわせ
ひらひらと、揺れる

その頼りなさが苦手だった
ひらひらと、揺れる
その頼りなさでは
隠し切れない
その影には
いつだって何かが隠れている
女らしさだとかやさしさだとか
つつましさだとか柔らかさだとか
そんなものが隠れている
隠れていることを、期待されている

私がはいたスカートも
風が吹けば
ひらひらと、揺れる
けれど、私は知っている
この影には何も隠れてはいない
ひらひら揺れる、その中に
あるのは私のからだだけ
その事実が
ひどく私を
居心地悪くさせる

スカートの中に
期待されているものが
花柄やレースのスキャンティでしかないのなら
どんなによかったか

今日は随分と風が強い
ひらひらとひるがえる
その頼りなさに
相応しいものをもたない私の
着古したジーンズの色は
日に日に春の空の色に近づいている
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