証明写真/
松本 涼
君が僕の詩を待っている頃
僕は君の声を待っている
賑わう街では肩を擦らせながら
人々が振り返らずに先を急ぎ
増殖した三角ポールは
国道の硬いアスファルトを齧っている
橋を渡れば誰も居ない土手を横目に
川は黒い夜を悠々と流れる
滑りの悪い僕の引き出しの奥では
まるで別人のような
十二月の証明写真が押し黙る
語れないことの中に
僕がいる
君が僕を信じる頃
僕は僕を裏切るのだろう
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