証明写真/松本 涼
 
君が僕の詩を待っている頃
僕は君の声を待っている

賑わう街では肩を擦らせながら
人々が振り返らずに先を急ぎ

増殖した三角ポールは
国道の硬いアスファルトを齧っている

橋を渡れば誰も居ない土手を横目に
川は黒い夜を悠々と流れる

滑りの悪い僕の引き出しの奥では
まるで別人のような
十二月の証明写真が押し黙る

語れないことの中に
僕がいる

君が僕を信じる頃
僕は僕を裏切るのだろう


戻る   Point(5)