写真/暗闇れもん
彼は写真の中でわたしとは違うひとの隣で笑っていた
この写真が彼とのはじまりで
わたしは
彼がわたしを好きになるずっと前から好きだった
賢くない頭で精一杯考えて
友達として、でいいから逢いたかった
何も知らない彼が、わたしのことを何も知らないのに
恋愛相談をする
それはあの写真のひとのことかしら
彼を笑顔にしたひと
笑顔の彼が見たくてそれでもいいと思っていた
心は逆に苦しくて
寂しさを埋めてくれるひとに身を預けた
愛してなんて言えなかった
愛していないもの
わたしが好きなのはずっと彼だけ
どうして寂しさに耐えられなかったのだろう
女は男が思うほどずっとずるがしこくて
汚いよね
ごく自然に付き合うことになったわたしと彼
彼は知らない
ずっと前から好きだったことに
必死で考えてこの場所を得たことに
隣にいる彼
彼は知らない
あの笑顔をわたしには見せてくれない
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