かなしみについて/
草野春心
それは光のなかに
夕暮れどきの街灯にある
一〇〇円ライターの炎のなかに
乱反射する水面にある
やさしい気持ちが消えないように
祈り続ける心の奥に
それは闇のなかに
うらぶれた路地裏にある
夜の遊園地の片隅
かたくむすんだ唇にある
本当のことだけを伝えようと
もがきさまよう嘘の奥に
そしてもちろん 君のなかに
小さな君の記憶にある
些細な言葉のやり取りや
傷つけあうことにさえも
しずかで強い意味がある
かけがえのないかなしみがある
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