「僕が手にしたもの」/菊尾
 
君から譲ってもらったのは 
淡いグラデーションの空 
透明に近いあの感じの中で 
僕は気が違いそうになっていく 
君から奪ったのは 
なんでも飲み込む深い淵 
虚ろになることで 
許されていた気がしたのに 
君は眼に映る全てを 
思い出したみたい 
鼓膜に住み着き始めた薄暗いこれからが 
灯篭みたいに優しく辺りを照らし始めている 
反比例していく僕らはその情景を 
互いの角度で眺めている 
誰かが僕らを哀しいと嘆いても 
散っていくその言葉の端を追うことで手一杯 
意味をまだ捉えることが出来ずにいる 
不完全な僕らは守る為に手を抜かない 
削られていく日常を誰かに止めてほしいけど 
叶わないから僕らは身を縮めて 
気持ちを大事にしていくだけだよ 
繊細な葉脈のように 
君も僕も 
ただ在りたいと願っている
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