落陽/松本 涼
在る様に見えた向かいのプラットホームに
止まる列車ばかりを待っていた
落ちかけた陽に照らされ
辺りの羽虫も塵も金色に飛び交う中
次第に此処へと近づく車輪の音を聴いていた
けれどそれはただひと時の光の戯れ
私は背の高い草むらに佇み
秒針を手放した不明瞭な五感を携えて
どこか遠い異国を走る車輪の音を聴いていたのだ
そしてまるで何事もなかったようにあっさりと
見渡す限りに陽は落ちて
緩やかに私を夜に近い場所へと浮かび上がらせる
戦ぐ草たちに話しかけることもなく
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