[カナリア]/東雲 李葉
 
彼女はカナリア。歌う鳥。
美しい声で森を奏で自由に空を舞うという。
私は歌を忘れた詩人。
情けないがもはや音を紡ぐ声も出ない。

どこから聞こえる旋律に溜息の拍手を送る日々。
愛する人がいるのだけれど胸に刺を刺す勇気も無く、
白い薔薇の花弁を尖った口でむしってしまう。
貴方のために歌いたいのに。貴方の詩を歌いたいのに。
重みを持たない言葉達は擦れた喉を下りていく。
両目が光を失うその前に、叫ぶように歌いたいのに。
例え天使の声には聞こえなくても、
身を裂くほどに切ない恋で白い花を染めてみたい。
彼女はカナリア。歌う鳥。
愛のために白薔薇を赤い
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