スクールガール、轢くトレイン/青木龍一郎
 
は冷凍サンマが一匹、無造作に放り込まれていた。

その光景に僕は一瞬クラッとした。
わずかな希望の光が絶望に変わった瞬間の「クラッ」。

しかし、贅沢はいってられない。このサンマだって刀になりうる。
僕は冷凍サンマを取り出し右手に構えた。
じじいは包丁を僕の顔に突きつけ、どんどん迫ってくる。

「どうした、ぼっちゃん。手が震えてるよ…。さ、サンマを俺によこせ…でないとお前ごと喰っちまうぞ…」

僕は覚悟を決めじじいに襲い掛かった。
「そりゃあああっ!」
冷凍サンマでじじいを切りつけようとしたが、手には意外な感覚が伝わってきた。

グニャリ

サンマが溶けている。
凍っていないと凶器にも何にもなりはしない。
僕はビビってサンマを手放した。
じじいは車イスのスピードを速めた。

「死にされせええっ!」


僕はギリギリで車イスを交わすと、じじいはそのまま線路上に勢いあまって入ってしまった。
そして、電車。
じじいは電車にグチャリと轢かれた。

雨が降ってきた。
戻る   Point(6)