或る冬の横断歩道で/エチカ
 
ど早く過ぎ去ってしまえ。



3、運転手

知らないビルの一角にいた
地下鉄の運転手
カップめんの食べ残し
伸びきった麺がだらしなく垂れている
布団に包まって
その夢は、昨日見ただろう。
また同じ夢を見るつもりなのか。

そのレールはまだ腐っちゃいないのかい。
ホラ足元の、あんたが今まで運転していた
真っ白なレールのことだよ。
よくごらんよ。
過ぎ去っちゃいないかどうか。







私はここにいない。
風景画のように通り過ぎていくんです。

走馬灯ではありません。
それはひどく柔らかいのです。
ひどく無機質で
冷たいのです。


私は、冬を忘れてしまいました。
まっすぐに歩けずに
すぎていくのです、ただいっさいは。






太宰よ あんた今どこにいるんだよ。 






戻る   Point(5)