或る冬の横断歩道で/エチカ
1、私
道路のわきに沿っている
白いはしごがひどくゆがんで見える
テールライトが砕け散ってしまっていて
私はここにいない
頭の中でゲシュタルトが崩壊していくように、
二足歩行の方法を忘れてしまっている
アルコールだのアスピリンだのが螺旋状に
ひどく柔らかく落ちていくみたいに。
2、女
剥がれかけた女の化粧が気にならないでもない
壁のように、そこにただあったであろうに
真夜中の信号機が点滅してちかり、ちかり、と
黄色い化粧に姿を変える
携帯電話を片手にして。
ただ呆然と前を見るんじゃない、
だらしなく笑うんじゃない、
くだらない若さなど早
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