機関車とくじら/小川 葉
 
機関車が吐いた雲が
今日はめずらしく
空になっている

そのはるか上層部で
空はやわらかく
諧調をなして
やがて海が広がっている

海は黙ったまま
何も言わずに
ただ海であろうとする

くじらの背中が潮を噴いた
その霧状の水しぶきの
はるか上層部でも
同様の現象が確認された

そして
私の心の中の、はるか
遠い世界の向こう側でも
それと等しい質量の何かが
何かであろうとしている
真っ最中だった
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