騾馬/蜘蛛/鬼/ピーカフ/鈴木
 
 昨晩は錯乱して
 まるで
 密林で春をひさぐ女たちの
 割烹着に付いたシミのよう
 
 木漏れ日の夜を塞ぐバスクが
 なりをひそめ
 フランス調の哀歌が響くとき
 騾馬に詩歌をつまびらくエルフこちら向き
 
 毛づやよいか
 遥か彼方に血潮ふりまく朝か

 ミクロを通して聞こえる声が波濤になり
 五等星を飲み込んだ

 *

 愛と心臓のふるさとを追い
 辿り着きたるは盲目のタランチュラ
 穏当な二重まぶた潰して猜疑食え

 千年経ってバラバラになった
 毒牙
 見る影なく
 それは一本のしらたき
 さぶらうは液体窒素のような
 地層のぬくも
[次のページ]
戻る   Point(1)