真っ白い画用紙に/狩心
 

同じ音を繰り返しながら、限りなく加速する、音楽のように

画家はまだ
絵の中の人物に
目を与えていない
彼らは 閉じた瞼の上を 指でゆっくりとなぞる
彼らは 永遠に夢の中の住人 音になって弾ける

本当の画用紙には
人物が一人も描かれていない

盲目の画家が 私の絵は音だ と言う
手元に置かれた画用紙に 広大な余白
枯れ木が一つ
風が吹き 木の葉が舞う

揺れる椅子に座っていた画家は 音もなく消えて
いつの間にか 絵の中の余白に 佇んでいる
それを見ていた少年が
余白がない都会の町に 風の流れを描き始める

風景を描くと
溶け出したはずの人々が
一人ずつ再生してくる
貴方の町に
風は吹いているか

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