兎/鴫澤初音
 
を通りすぎていった。
校門に近づくと、脇に老人が二人赤いTシャツに細すぎる
ジーパンをはいて ビラを配っているのが見えた。
誰もが決まったように無視していて
サチエは少し不思議に眼を見開くけれど、
老人たちのにやにやとつり上がる唇に嫌悪を催した。

近くなってくる二人の老人は何も言わずに
ビラを配っていた。何が書いてあるのだろう、
サチエはそう考えたが、頭の隅では朝の夢を反芻しながら
夢見ごちで配られたビラを受け取り鞄に入れた。
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