姉という生き物/亜樹
ないことだった。姉はそれを放棄していた。おそらくは、はじめから。
そして、姉が棄てていったものを、私は必死に拾い集めた。
その結果、私は、真面目で、忍耐強く、親孝行な娘にと成ったのだ。
そうして、それは今も続いている。
いっそ、私も棄ててしまいたい、とは思う。
けれど、それは思うだけだ。
22年はあまりに長かった。私が身に纏ってきた仮面は、凝り固まってもうはがれない。
棄てたところで、弟妹は拾うまい、とも思う。
ならば、もう、私は死ぬまで、この水銀のような歪みを貯め続けるしかないのだろう。
50を過ぎた両親のことを思えば、それがおそらくはそれが最善なのだ、と思う。
思うように、している。
最近姉から連絡はない。次に連絡があるとすれば、おそらく春だ。
彼女はもう帰ってこないだろうと、私は確信している。
そうして、今から私は、ひどく落ち込むであろう両親を、如何に慰め、宥めるか、その言葉を必死で考えている。
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