水道局員/水口わする
冷たい風が吹いていたその日
冬が近いのを感じていた
君がドアを開けた時
僕は地下鉄で眠っていた
君が奪われたものは何だったのかな
ドアを開けた時
知らない顔の君がいた
君から香る石鹸の匂いが哀しかった
同じ事を何度も言わされて
同じ事を何度もさせられて
紙切れ数枚の物語にまとめられ
それでも君は泣かなかった
ごめんね と笑って見せた
空っぽだった
君はいけない事したのかな
白い目で見られる事したのかな
その水道局員は今どこで何しているんだろう
働いてお金を貰って
食事を採って風呂に入って酒を飲んでいるのかな
もしかしたら家庭があって素敵な人生を送っているのかな
僕が静かにおちる時
君は泣き疲れて眠っていた
そいつは
どこかで人間やっているのかな
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