配達人/松本 涼
冬の配達人が
夏に来て
僕に言う
「君の手紙には切手があと十円足りません。」
早く切手を買わなくちゃ
朝の配達人が
夜に来て
僕に言う
「君が書いた宛先は薄くて名前が読めません。」
しっかり力を入れなくちゃ
山の配達人が
街に来て
僕に言う
「君が送った荷物の受取人はもう行方が分かりません。」
あの人を探しに行かなくちゃ
昨日の配達人が
明日来て
僕に言うだろう
「君に預かった贈り物はどこかに落としてしまいました。」
もいちど創り上げなくちゃ
はじめから
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