二番線ペーソス/atsuchan69
 
直な話なら、
高架下の古本屋で
まるでサルトルの全集を売るみたいに
給料日まえの新月の夜、
悪魔と取引きをしたら良かった。

子供たちが云う、
パパはどうしていつも怖い顔なの?
僕は不潔な背広を脱ぎながら
おまえたちの生活を守るために・・・・
と、云いかけてやめる、
パパは本当は怖くなんかないさ
でも、今日も大変な仕事で
また人を裏切ったなんてとても云えない

「今月、蟹を食べに行こう!

いつもはいない、ママも
そのときは必ず来るにきまってる
みんなで貸切の温泉に入って、
家族水入らずの団欒みたいにさ
インターネットで各安のツアーを探して
おまえたちの本当のママと、
厳冬の日本海へ蟹を食べに行こう

そのあと暫くは
どうかパパを、
お願いだから探さないでほしい
二番線プラットホームから、
また遠い海へ釣りに行く

たぶん正月までには戻るから

――許してくれ。

戻る   Point(8)