豊かさの中で/ぽえむ君
豊かさの中で
ぼくたちは泣いている
ほしいと思ったものが
いつでも手に入るから
いつでも捨ててしまう
持つべきものがなくとも
誰かが持ってきてくれる
便利さだけでは
豊かにならないことを
誰もがわかっているのに
それを幸福だと感じなければならない
そんな押し付けに
ぼくたちは泣いている
こんなに豊かなのに
本当の自分のものはと聞かれたら
もしかしたら
一つもないのかもしれない
そもそも
自分というものがあるのかどうかさえ
わからない
豊かさの中で
ぼくたちはいつも貧しくて
何かに飢えながら
そして泣いている
ぼくたちは笑いたいだけなのだ
自分らしい笑顔のない豊かさの中で
ぼくたちは泣いている
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