声/よしおかさくら
いつからか聞こえている低音
息遣いが確かに在った
〈それはそう、あれなのだよ、
俺はそう思うね〉
言葉の輪郭をなぞりながら
からっぽの頭に繰返して話す
それは先程伺いましたと
シャッターを閉めても追ってくる
〈でもさ〉とかなんとか
決して声を荒立てずに
言葉の限りを尽くして話す
とりとめなく続く思考に
曖昧に返事をするも
それはあなたには
どうでもいいようだった
時間の
進んだのか戻ったのか
わたしの
意識はあるのか遠ざかったのか
聞こえなければ黒の闇
意志に自由は無く
聞こえていれば群青の闇
反論しても無視されて自由
頭のなかに確かに在るが
触れることができない
わたしの思考ではない
声を聞く以前に戻りたい
でなければあなたに
わたしの声を
意識してもらわなくては
わたしだってここに
ここにいるのです、と
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