じゃがいもの花/容子
泥のついたじゃがいもを手に取り
母さんはわたしへと目を向け
折り返し台所の窓に映った自分へと
そして再びわたしへと目を戻す
心なしかじゃがいもの泥を洗い流すときの
母さんの手は力強く見え
その姿を見かけた翌朝のわたしは
きまって化粧に時間をかけ一等の笑顔で
母さんにおはようを言う
それでもなお朝食卓に並ぶ
調理されたじゃがいもは
お椀の味噌汁の中から
母さんと同じ目で
わたしを眺めてくるものだから
泥のついたじゃがいもを手に取り
母さんがわたしへと目を向け
折り返し台所の窓に映った自分へと
そして再びわたしへと目を戻す
そんな母さんを見かけた夜は
布団の中へとうずくまり
土の中へもうずくまる
泥臭いわたしから生えたじゃがいもの
新芽がいずれは咲かすその花を
じっと待ちじっと待ち
やがて朝を向かえる
戻る 編 削 Point(10)