風船/虹村 凌
 
オレンジ色の太陽が
真上から覗き込む
とても明るい駅前広場で
足の長いおじさんは
子供達に風船を渡していた
沢山の風船に
その足の長いおじさんは
今にも飛ばされそうで

まるで味がしないかのように
缶コーヒーを飲み干すと
面白くなさそうに
そのおじさんを眺めたまま
銀色のケースから煙草を取り出して
金色のライターで火をつけた君を
黙ってみていたんだ

「小さい頃は風船で空を飛べると思っていたわ」
君は突然に微笑んで言った
「あの子達も、きっと風船で空を飛べると思っているわ」
赤い口紅がうっすらとついた煙草のフィルターを
僕の目の前に突き出して言った
「吸
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