魔夏/桜鬼弓女
逃げ水に憩う少年の亡霊
殺された理由を知っている
水中花に己をなぞらえるが
枯れた薔薇の木である自分の骨を知っている
折れた枝 千切れた花冠 あるがままに
磨れた肌 紛れた破綻 あらがうこともなく
鏡を見ては不可ないよ 君は映らないからね 死者と云えども屹度気が触れる
逃げ水を洋盃に一杯ついで
君を見附けた少女にあげると良い
夏にしか現れない君に
恋して窶れて―――果敢無くなって
君を慰め抱きしめる
絶対零度の恋人になってくれるだろう
逃げ水に憩う少年の亡霊
此の夏は何人沈めたの?
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