目玉焼きの夢/マツモト
目を覚ませば夏だろうか
道路で目玉焼きを必死に焼く 夢を見た
ヒリヒリする
多分足の擦り傷だ まだ治ってない
俺がペタリと座り込んでいる道路には人も車も全く来ない
そこだけ静かで 忙しそうに動く向こう側と
のろのろ卵を割るこっち側では世界が違う
上手く黄身が真ん中にこないので今回も失敗だ
醤油の味に飽きてきた俺は
5回目 失敗したらケチャップでもぶっかけてみよう、と
ヒリヒリする痛みの中 考えていた
目を覚ませば夏だろうか
夏だろうか
鮮やかな赤に俺の口元と目、鎖骨、シャツ、手
ぐっしょりと濡れている
隣で寝転がってる男の胸には深く深く
夏が突き刺さっていた
多分ケチャップだろう
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