「sea」/菊尾
 
悲しい歌が 
君を狂わせる 
指を折って 
願う 
見据えた静かな未来 
潔癖な大地 
落ちて行く残像 
波間に漂う 
素足で君が 
誘うように手を招く 
聞こえてくるあれは 
残された人の歌 
目が眩む月光 
湿った空気の中で繁殖した 
愛という名前の細菌 
煙草の吸い方 
あの笑い方 
嘘だけが真実 
海の嘆きと君の後ろ姿 
歌声は波に掻き消されながらも響く 
かすかに 
遠くて近いような 
母体の中で聞いていたそれは 
まるで子守唄のように 
楽にはなれない 
絶望の中でしか見つけられないもの 
それを人は 
希望と呼んだ
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