君想うゆえに君あり/木屋 亞万
 
私が私を感じなければ
ここには誰がいることになるのか
体内には一人分の意志しかない
自分で自分に触れるとき
誰かの手が触れるときのように
鼓動が跳ねることは無い

手が叩く音は
壁を越えて耳に届く
君の声は雑な声を越えてくる
君の存在は誰よりも
体内の私に近い

これがたった一人の人なのか
お辞儀をする
この後頭部は
敵意が無い印ですよと
敵が来ても
優しい手が白羽鳥
白鳥のように羽ばたいて
剣を受けていなしてしまいますよと

私が君を感じなければ
体内には一人だったのに
もう君がいる
羽根なんか生えてない
素手の叩く音が
鼓動の調子を整える
今は壊れたメトロノームより速い
胸に白い羽根が突き刺さり
地面ごと足は浮ついている

私を思い私を知り
君を想い君を知る
君は私をどう思う
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