憂鬱をブルーと呼称した人の夜へ向けて/
 
ブルーを飼いならすこと。
ブルーに打ちのめされること。
打ちのめされたブルーを飼いならすこと。

その繰り返しの中で、
鳴るはずのない電話が鳴り、
鳴って欲しくない電話が鳴る。

執拗な波状攻撃を繰り返す憂鬱のブルー。
あらゆる電話を無効化し、
あらゆる食物を無味と化す圧倒的なブルー。

手前勝手な信頼が崩壊した後に訪れるブルー。
妥協の末に取った受話器の向こうで聞こえるブルー。

「ブルーを飼いならすこと。
 ブルーに打ちのめされること。
 打ちのめされたブルーを飼いならすこと」

聞く人が絶えた受話器に向かって、
味のしないシュークルートをほお張ってそうつぶやく。

飼いならすべきブルー、君は何処にいる。

この鳴らない受話器の、最果ての彼方か。
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