憂鬱をブルーと呼称した人の夜へ向けて/平
ブルーを飼いならすこと。
ブルーに打ちのめされること。
打ちのめされたブルーを飼いならすこと。
その繰り返しの中で、
鳴るはずのない電話が鳴り、
鳴って欲しくない電話が鳴る。
執拗な波状攻撃を繰り返す憂鬱のブルー。
あらゆる電話を無効化し、
あらゆる食物を無味と化す圧倒的なブルー。
手前勝手な信頼が崩壊した後に訪れるブルー。
妥協の末に取った受話器の向こうで聞こえるブルー。
「ブルーを飼いならすこと。
ブルーに打ちのめされること。
打ちのめされたブルーを飼いならすこと」
聞く人が絶えた受話器に向かって、
味のしないシュークルートをほお張ってそうつぶやく。
飼いならすべきブルー、君は何処にいる。
この鳴らない受話器の、最果ての彼方か。
戻る 編 削 Point(2)