初旬、二七日/鴫澤初音
 
は無条件に美しいけど今じゃ
 どの花を見ても あの猫が下にいることばかり 考えて
 しまうから   
                  ねえ 悲しさって何
 あのこ
 もう死んじゃって してあげられることなんてない
 私が泣いてそれで どうなるんだろう

             ああなんて 馬鹿 馬鹿みたい」

                          泣いて

   
 猫が死んでいた縁側で 夜明け立ち尽くしている
 妹はぴんと張った視線を揺るがすことなくどこかを 見ていて
 そうして 手をかけた柱に刻まれた背の高さの年月が
 どのようにして 妹を押
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