初旬、二七日/鴫澤初音
妹はよくセックスは嫌いだと言った
「恋人も嫌いさ だって鬱陶しいもん 恋って何だろう ふん
そんなもんがあるとしてさ
・・・私さ ね 人が隣にいる体温が、熱さが好きなんだ
だから セックスなんてなくてもいいんだ」
そう言って ごろんと裸でベッドに横たわって手の平サイズの
胸をペタンコにして まるで少年みたいに両手に本を持って
読み始めた 窓から
風が吹き込んで 髪がさわさわと揺れていた 眼を真剣に
潤ませて 文章を追う妹の 開いた唇がかすかに動いていた
風が 夕刻になりかけのきれいな空の匂いをさせて
シーツに起きあがった素肌に気持よかっ
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