その先に/クロイソラ
 
思議な空気を感じさせるその少女を見た僕は冷や汗をかいた。
見透かされた気がした。

その薄茶色の綺麗な瞳に、僕の心が映った気がした。

僕はしばらく目をそらす事が出来ず、その場を動くことが出来なかった。

実際には1分も経っていないだろう。

でも僕には1時間にも2時間にも感じた。

冷や汗がゆっくりと首筋を滑り落ちる気がした。

しばらくし、少女はゆっくりとその小さな口を開いた。

「どこへ行くの?」


首筋を流れ落ちた汗は、その言葉と同時に僕の心の何かの引き金を引いた。

首筋の汗を拭い取り、沸騰した血液は僕の顔を上げさせ、

目を見開いた僕はその少女に虚偽の笑顔を振りまいた。

「どこにも・・・」

僕はまた下を向き繁華街の来た道を引き返した。

ふと見上げても月はどこにも見当たらなかった。

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