鬼の左手 (3/3)/mizu K
 
と思うたか
その傷口から命が流れ出していることに気づかなんだか
枯れる前に腕を取り返さねば
死ぬぞ/

女はしばらく倒れた男を見下ろしていましたが、沈黙したま
まの姿に何か思案している様子、つと、呼び込んでしまった
な、と小さくつぶやき、それから

ならば我から滴りおちるこの汗をやろう/

ひとつぶのしずくが、ぽおんと空から落ちてきて、鬼のまぶ
たに落ちて、それは鬼のまぶたにしみとおり、鬼のひとみを
濡らし、目からあふれさせた、鬼は、おのが左腕をどこに落
としてきたのかやはり覚えていないまま、茫然と水無月の空
を見上げており、まなこからあふれるしずくをぬぐうことが

[次のページ]
戻る   Point(2)