鳥の国に行ってきました2667/人間
次々と鳥の首を切りながら 幼少時の初体験を思い出したりします
その昔 例の彼とは友達でありました
それも冬の鳥小屋で終わったのです
祖父から教わった方法で
ビン入り炭酸水の蓋を開ける時の握り
LPガスボンベのコックを閉める時の力
柔らかい気道を搾る要領で
ゆっくりと
まわして
ねじる
力を込めて
堅くなったら圧し折る餓えから鉈を振る切れた縁から滴る体温
広がる勢力 か細く沈む歴史
オンボロの雪は穴だらけ
無い頭をまわし
切れた首をねじり
節穴の鳥目で見
彼の首が雪の王位について さもしい国政に頭を悩ませ
鳥小屋の民衆は食い繋いで さみしい夜明けを鳴いていました
そのまま 死ぬ為に生きてくれ
とは思わないけれど
このまま ここが鳥の国になれば良かった
とも思わないまま
わたしは人様の役から外れて
発泡スチロールもサランラップも半額シールも
油鍋もダシ汁も強火もビン入り炭酸水もLPガスボンベも鉈も
全て引き連れる首の無い鳥の王になって単独縦横無礙においしく命をいただきます
わたしの首の沈黙に ごちそうさまが沈黙に鎮座した
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