赤い星/亜樹
 
あの星は燃えています
もう随分昔から
赤々と燃えています

燃え出す前は
誰かが住んでいたやもしれません
白いお城が建っていたやもしれません
王様が口をへの字に曲げて
エメラルドの杖を持ち
人生は退屈だ、と
嘆いていたやもしれません
それを聞いた村娘が
黄色い花の束をもって
お城を訪ねたやもしれません
忠義一途の門番が
お母様のこしらえた
林檎のパイを
献上したやもしれません

なにしろ遠い昔です
確かめる術はございません
ただ一つ
確かなことは
あの星は今
赤々と燃えているということです
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